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ID番号 10066
事件名 地方公務員法違反被告事件
いわゆる事件名 大教組勤評反対闘争事件
争点
事案概要  地公法違反の争議行為をあおったことが同法六一条四号にあたるとして起訴された事案において、一斉休暇闘争と年次有給休暇の関係について判断された事例。
参照法条 労働基準法39条
地方公務員法61条4号
体系項目 年休(刑事) / 年休の付与
裁判年月日 1964年3月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (わ) 735 
裁判結果 無罪
出典 下級刑集6巻3・4合併号309頁/時報385号32頁/タイムズ161号195頁/教職員人事判例3号485頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年休-年休の付与〕
 ところで、およそ休暇は使用者が労働者の労力を支配していることを前提とするものであるのに反し、同盟罷業は集団的に労働力を引きあげ、使用者の労働力に対する支配を一時的に排除することを本質とするものであつて、休暇と同盟罷業とは本質上相容れない性質をもつものといわなければならない。しかしながら年次有給休暇請求権が権利として確立されている以上、労働者が有給休暇をどのように利用しようと自由であつて、使用者は労働者に如何なる目的に有給休暇を使用するかを陳述させたり、目的の如何によつて休暇を与えることを拒否したりすることはできない。そうだとすると、たとえ労働者が争議目的をもつて有給休暇の請求をなしたとしても、それが労働基準法に基づく年次有給休暇請求権の行使としてなされ、かつ権利の濫用にわたり就労義務消滅の効果を生じない場合でないならば、使用者はこれに対して時季変更権を行使し得るにすぎない。これを本件についてみると、右一〇割休暇闘争は、大教組の機関の決定に基づきその統制に従つて、大教組の組合員である府下公立学校教職員全員が、上記の通り有給休暇を請求し時季変更権行使の有無にかかわりなく就労せず、職場を離脱しようとするものであつて、それが事業の正常な運営を阻害することは疑いがなく(この点はなお後に説明する)、しかも本件各証拠によれば、右闘争による休暇届の提出時期は大会決定にも行動規制にも明示されていないけれども、従前の各休暇闘争においても闘争前日の午後に提出されることが多く、これが慣行化しており(前日午後に休暇届を提出するよう行動規制に定めたこともある)、右一一月五日の場合にも執行部及び各組合員間でほぼ前日の午後あたりにこれを提出するものと考えられていたものと推認され(実際には大部分前日の午後に提出され、中には闘争当日の朝提出されたものもある)、かような大量の休暇届提出に対し、時季変更権者である学校長ないし教育委員会が時季変更権を適切に行使するに十分な期間をおいて提出することを予定していたものとも認められない。してみると、右一〇割休暇闘争は、有給休暇請求権の濫用であつて、正当な有給休暇請求権行使の法律上の効果を発生する余地がないといわざるを得ず、同盟罷業としての実体を有するものと評価すべきである。