全 情 報

ID番号 10112
事件名 就業制限違反被告事件
いわゆる事件名 太平工業事件
争点
事案概要  年少者に危険有害業務に従事させたとして起訴された事例。
参照法条 労働基準法62条2項
労働基準法119条1号
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1959年5月12日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (う) 87 
裁判結果 有罪(罰金3,000円,5,000円)
出典 労基判集2号956頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 原判決は被告人等がA株式会社釜石支店平田工場における労働基準法六三条二項に規定する使用者に該当する事実、Bほか六名の満一八才に満たない年少者が公訴事実記載のとおり右平田工場の作業場において労働基準法六三条二項、女子年少者労働基準規則八条二九号所定のカーバイドを取扱う業務で発火のおそれある浸漬式アセチレン発生器のカーバイド詰替作業に従事した事実を肯認しながら、同法六三条二項違反として同法一一九条一号による処罰がなされるためには使用者自身が故意に基く所為をもつて同法六三条二項の規定に違反することを要し、使用者の過失ないし無過失による犯罪の成立を認めるものでないことは疑問の余地がなく、被告人等が前記及川勝悦ほか六名の年少者に対し前記詰替作業に従事するよう直接又は間接に指示しもしくは命令したことが認められない以上本件公訴事実は結局犯罪の証明がないことに帰するとして被告人等に無罪の言渡をしたことが明らかである。
 しかし、労働基準法六三条二項は「使用者は満一八才に満たない者を…爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務…に就かせてはならない」と規定し使用者に対し年少者がかかる業務に従事することを防止する義務があることを明らかにしており、その法意が年少労働者の安全、衛生又は福祉を保護する目的に出でたこと更に同法一一九条一号の処罰規定が前記法条の違反を労働者の基本的人権を侵犯する意味をもつものと観念していると解せられることを考察すると、前記法条に所謂業務に就かせるとは使用者が年少者に対し直接又は間接に指示し若しくは命令してかかる業務に従事することを要求し又は促した場合のみに限らず、年少者がかかる業務に従事していることを知りながらこれを防止する措置をとらず放任することをも含むものと解すべきであり、右いずれの場合の使用者は同条違反の責任を免れない。