全 情 報

ID番号 10124
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 小島撚糸事件
争点
事案概要  違法な時間外労働、休日労働(および深夜労働)をさせた場合に、割増賃金を支払わないことは、労基法三七条違反を構成するか否かが争われた事例(消極)。
参照法条 労働基準法37条
労働基準法119条1号
体系項目 賃金(刑事) / 割増賃金の不払い
裁判年月日 1958年2月5日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和32年 (う) 829 
裁判結果 破棄(自判)
出典 新聞104・105合併号29頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金の不払い〕
 よつて、案ずるに、原審が原判決摘示事実の第二において、原判示A株式会社の代表取締役社長である被告人が、法定の除外事由がないのにかかわらず同会社工場において昭和三十一年六月一日より同年同月二十五日までの間、女子労働者Bほか十一名をして延べ約千百七十五時間の時間外労働および休日労働をさせながら、その超過労働に対し基本賃金の二割五分以上の割増賃金を完全に支払わなかつた事実を認定し、被告人の右所為を労働基準法第三十七条第一項第百十九条第一号の罪に問擬処断していることは所論のとおりである。ところで、同法第三十七条第一項第百十九条第一号のいわゆる割増賃金不払の罪は、当該時間外労働または休日労働(および深夜労働)が、同法第三十三条の規定により行政官庁の許可(ないし事後承認)を経て行われた場合、および同法第三十六条の規定により使用者と労働組合ないし労働者団体との間に成立した協定に基いて行われた場合の割増賃金不払に関するものであることは、同法第三十七条第一項の文理解釈上明白である。しかるに、原判決第二の事実は、使用者が同法第三十三条および第三十六条規定の条件を満たさずして労働者をして時間外労働および休日労働をさせ、この超過労働に対し基本賃金の二割五分以上の割増賃金を支払わなかつた場合であつて、使用者の右所為中、労働者をして時間外労働および休日労働をなさしめた点は、同法第三十二条第一項第百十九条第一号の罪に該当することは当然であるが、右割増賃金不払の点は、(支払義務ありと解するが)同法第三十七条第一項第百十九条第一号の罪に該当しないものといわなければならない。