全 情 報

ID番号 10162
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  労基法六条違反の罪と職安法六三条二号違反の罪の関係が争われた事例。
参照法条 労働基準法6条
労働基準法118条
体系項目 労基法総則(刑事) / 中間搾取
罰則(刑事) / 併合罪等
裁判年月日 1955年9月27日
裁判所名 広島高岡山支
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (う) 157 
裁判結果 破棄(自判)
出典 時報64号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-中間搾取〕
〔罰則-併合罪等〕
 原判示の如く婦女を売淫婦として就業させることを斡旋した場合には、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介をした者として職業安定法第六十三条第二号の犯罪を構成し法律で許された場合でないのに業として右の就業を斡旋して利益を得た場合には労働基準法第六条第百十八条の犯罪を構成すること及び右職業安定法違反の罪が併合罪であり右労働基準法違反の罪が包括一罪として取扱われるべきものであることについては、異論のないところと思料せられる。然し、原判決は同一の婦女に関する右職業安定法違反の罪と右労働基準法違反の罪との関係は、刑法第五十四条第一項前段にいわゆる一個の行為にして二個の罪名に触れる場合に当ると解するのであるが、右職業安定法違反の罪は婦女を売淫の如き公衆衛生又は公衆道徳上有害なる業務に就かせる目的でその就業の斡旋をした一切の場合即ち有料であると無料であるとはたまたま業とすると否とを問わず広く処罪の対象とし、しかも一回の斡旋行為の完了と共に同罪は既遂となるに反し右労働基準法違反の罪は法律に於て許されている場合でないのに業として右の就業に介入して利益を得た場合に限るわけであるから、等しく右の就業の斡旋をしたとしても何等の利益を得ていない場合又は就業の斡旋を業としたものではない場合は少くとも右の労働基準法違反とはならないことは明らかである。
〔労基法総則-中間搾取〕
〈労働基準法第六条における〉業としたといい得るためには、単に一回の斡旋行為によつても尚且之を認め得る場合がないとはいえない、が右の労働基準法違反の罪はいわゆる業態犯に属し原則として業としてしたものと認定し得る程度に継続して反覆されることが予想されている。