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ID番号 10181
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 北海道鉱山事件
争点
事案概要  労基法違反(強制労働)の行為者とされる者が、労働者と共に飯場に起居しつつ、坑夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において行為したというだけでは、「会社のためにした代理人、使用者その他の従業者」とはいえないとして、両罰規定の適用を否定し、原判決のこの部分を破棄した事例。
参照法条 労働基準法5条
労働基準法121条
体系項目 労基法総則(刑事) / 強制労働
罰則(刑事) / 両罰規定
裁判年月日 1953年11月10日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 昭和28年 (う) 367 
昭和28年 (う) 368 
裁判結果 一部破棄自判・棄却・有罪(罰金100,000円)
出典 高裁刑集6巻10号1414頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-強制労働〕
〔罰則-両罰規定〕
 被告人Yが労働基準法第十条にいわゆる使用者に該当し且つ労務者に対し労働を強制したものであることは前段説示のとおりであるが、原判決は「被告人Yは右A鉱業所において労働者と共に飯場に起居しつつ、坑夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において被告会社のためにその実施に参していたものであるところ」と事実を認定し被告人会社に対し労働基準法第百二十一条第一項に該当するものとして有罪の言渡をしているのである。しかし、同法第百二十一条第一項の罪は労働基準法の違反行為をした者が当該事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をした代理人、使用人その他の従業者である場合においては行為者を罰するの外、事業主に対しても各本条において定める罰金刑を科する両罰規定であつて、本件について見ると、被告人Yが被告人会社のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合に被告人会社を処罰し得るのであつて、そうでない場合は、被告人会社を処罰し得ないのである。ところが原判決は被告人Yは労働者と共に飯場に起居しつつ、坑夫等の労働に関しその監督使用につき事業主側の立場において被告人会社のためにその実施に参加していたものであると判示するだけであつて同人が被告人会社の代理人、使用人その他の従業者であつたか否かの点については何ら確定するところなく漫然と労働基準法第百二十一条にあたるものとして同条の罪に問擬しているのである。して見ると原判決には理由を附さない違法があるといわなければならないので原判決は破棄を免れない。