ID番号 | : | 10222 |
事件名 | : | 労働基準法違反被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 大岩工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 解雇予告後に労働者からの退職申入れと使用者の承諾(合意解約)があった場合に、労基法二〇条が適用されるか否かが争われた事例(否定)。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条 |
体系項目 | : | 解雇(刑事) / 解雇予告と除外認定 |
裁判年月日 | : | 1951年12月24日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和26年 (う) 77 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 高裁刑集4巻12号1667頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇予告と除外認定〕 所論は労働基準法第二十条にいわゆる「労働者を解雇しようとする場合」というのは本件の如き使用者が業績不振等の理由により退職を要望し労働者がこれに応じたような場合をも含むべきものと主張するのである。 思うに同法条にいわゆる「労働者を解雇しようとする場合」とは使用者が労働者の意思如何にかかわらず一方的に雇傭関係を終了させようとする場合であつて、労働者の真意に基いて右関係を終了しようとする場合を含まないものというべく、従つて労働者の意思に基くという形式をとつていてもその事は労働者の真意に基かない使用者の一方的な行為である場合はもとより同法条に該当するけれども、労働者の真意に基く以上、その動機が転業その他の純個人的事情でなく、使用者経営上の行詰とか事業の将来性といつた使用者側の事情をも考慮したにあるにもせよ使用者の一方的解雇にはあたらないものと解するのが相当である。本件においてこれを記録に徴するに、昭和二十三年十二月十七日被告人YよりA外四十七名の労働者に対し会社の窮状を訴え退職を要望したのに対し、労働者側がこれを一蹴したため、改めて被告会社より同月二十日解雇予告通告あるや、労働者側で大会を開いて慎重協議の結果、予告期間の満了をまたずして任意退職することによりBをして賃金支払促進方善処を期待するのが実質的に有利なりとの結論に到達し、同月二十五日退職届を提出し会社がこれを受諾した結果本件雇傭関係が合意によりここに終了するに至つた事実、換言すればBからした退職要望(合意解約申入)は労働者が一蹴したためそのままとなり次で被告会社からした同法第二十条による合法的な解雇予告通告に対し、予告期間満了による雇傭関係終了に先だち、労働者から退職届出(合意解約の申入)をなし会社が受諾し雇傭関係が終了するに至つたこと、即ち理論的には被告会社の要望を労働者が受諾したという所論事情によるものではなく労働者の解約申入れ被告会社が受諾したことがきわめて明白であり、唯労働者の一蹴した当初のBの申入れは、会社の解雇予告通告に善処するにあたり、会社の窮状認識あるいは利害関係打算上斟酌されたいわば意思決定の過程における動機に過ぎないものというべく、従つて前叙の理により本件は右法条に該当しないものであるから、これと同旨にいでた原判決はまことに正当であり論旨は同法条の不当な拡張といわねばならぬ。 |