ID番号 | : | 10237 |
事件名 | : | |
いわゆる事件名 | : | 茨城県貨物自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全員総辞職する旨の発言により、解雇予告がなされなかった場合につき、労基法二〇条違反が成立するか否かが争われた事例(否定)。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条 |
体系項目 | : | 解雇(刑事) / 解雇予告と除外認定 |
裁判年月日 | : | 1950年7月11日 |
裁判所名 | : | 最高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | |
出典 | : | |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇予告と除外認定〕 所論は先ず、原審はAの「若しこの要求が容れられないときは全員総辞職する」旨の発言内容を最も重要な証拠とし、これを実験則に違反して解釈したため、不当な結論に達した違法があると主張する。 しかし原判決が無罪の理由として説示しているところを仔細に検討するに原審は主として所論の如きAの発言に基いて結論しているわけではない。むしろAが全員辞職する旨発言したのは賃上要求に圧力を加える偽装で決して従業員の真意ではなかつたと認めているのである。そして原審はこのような発言があつた場合には辞職ということは従業員にとつて重大な利害関係のあることであるから軽々しくなすべき筈のものでなく、又往々右の如く偽装として発言する事例もあるのであるから被告人としては直接従業員各個についてその真意を確めてみることが望ましい用意であるのに被告人がこれをしなかつたのは不用意であつた。しかし不用意ではあつたが当時のAの強硬な全員辞職の主張、被告人のその後に採つた行動、被告人の性格などからみて、被告人はAの全員辞職する旨の発言を言葉どおりに受取り、これを真意と誤信したのではないかと思われる節もあるので、結局起訴状にいうが如くAの右の如き発言が真意ではないことを諒知しながら、その発言のあつたことを奇貨として従業員を解雇したのであるとの点については証明不十分であると判断しているのである。右の如き原判決の示す理由は十分納得のいくことであつて別に実験則に違反する点はない。 |