ID番号 | : | 10260 |
事件名 | : | |
いわゆる事件名 | : | 精巧舎製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働協約によって支払期日を変更した場合にも労基法二四条違反が成立するか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法24条2項 |
体系項目 | : | 賃金(刑事) / 賃金の支払い方法 / 定期日払い |
裁判年月日 | : | 1950年11月27日 |
裁判所名 | : | 新宿簡 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | |
出典 | : | |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金の支払い方法-定期日払い〕 弁護人は法律上犯罪を妨げる理由として、 一 (略) 更に、二 労働者側は労働組合の威力を用いて右遅払後即ち昭和二十四年六月頃より同年九月頃迄の間に被告人所有に係る右製作所の材料工具及び機械類等約数十万円相当(弁護人提出の昭和二十五年六月付証拠説明書によればこの見積額七十余万円とあり)を無断で他に搬出して、これを他に売却しその売得金を以て賃金の一部に充当した。これが為に被告人は賃金を完全に支払つた以上の損害を蒙り事業の経営難に陥り、遂に工場閉鎖の已むなきに至つたもので現在被告人は多額の債務を負担しながら失業状態にあつて生活苦にあえぎつつあり、労働者よりむしろ被告人に於てより以上生活上の脅威を受けつつあるのであるから、かように労働者の生産管理にも等しい行為によつて使用者の経営を困難ならしめ剰え資材を以て賃金の一部に充当したるが如きことは、たとえ賃金の遅払があつたとしても犯罪の成立を阻却さるべきである旨を主張しているが (中略) 弁護人の二、の主張を観るに労働者側がその資材等を他に搬出し遅払賃金に充当した等の事実は本件遅払発生後のことであることは弁護人の主張自体によつても明白であるから本件違反が定期日の遅払により、直ちに完成するものと解すべきであること前説示の通りである以上これを犯罪の情状につき考慮すべきところはあつても本件犯罪の成否には何等影響するところがないから弁護人の二、主張も亦之を採用することはできない。 (中略) 先ず右弁護人主張の一、の点について按ずるに、法第二十四条第二項は賃金定期払の原則を定めておるが、元来賃金は労働者並その家族の生活を支えている唯一の糧であつて、其の支払は所定の期日に確実になされねばならぬ事は勿論であるから、その支払期日は使用者の経理若しくは金融状態を理由として軽々しくできないことは当然の事由であるのみならず、前示規定を同条第一項と対比するときは、仮令労働協約によつても支払期日の変更を為すことは出来ないものと解するのが相当である。従つて本件に於て今仮に労使の当事者間に弁護人主張の様な協定が成立したとしても毎月二十五日を期日として賃金の支払を為すべき被告人の責務につき何等変りはないのである。果して然らば賃金定期払の原則は労使当事者の協約により之を変更し得ないとなすべきに拘らず、之と反対の見解を前提として為された弁護人の主張は総てその失当であること疑を容れないから、之を排斥する。 |