ID番号 | : | 10300 |
事件名 | : | |
いわゆる事件名 | : | 鐘紡事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 年少者に対する時間外労働違反の成立の有無(肯定)と、これに関する労基法一二一条(両罰規定)の適用につき、同条但書の「違反の防止に必要なる措置」の意義について争われた事例(肯定)。 |
参照法条 | : | 労働基準法32条 労働基準法60条 労働基準法119条 労働基準法121条 |
体系項目 | : | 年少者(刑事) / 未成年者の時間外労働 罰則(刑事) / 両罰規定 |
裁判年月日 | : | 1949年7月15日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | |
出典 | : | |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年少者-未成年者の時間外労働〕 被告人Yは大阪市都島区(略)所在のA株式会社淀川支店の漂白課長として同支店漂白課工員の作業を指揮監督するものであるが、右会社の業務に関し昭和二十三年四月一日頃から同年九月二十日頃迄の間右淀川支店で起訴状添付の一覧表記載の通り、漂白課工員B(昭和七年一月二十九日生)外八十名の満十八歳未満の者を夫々一日に実働八時間を超えて労働させたものである。 (証拠説明省略) 法律に照らすと被告人の判示所為は労働基準法第三十二条第一項、第百十九条第一項第一号に該当するから、所定刑中罰金刑を選択し、其の所定罰金額の範囲内で被告人を主文掲記の通り量定処断し刑法第十八条に則つて被告人に於て右罰金を完納しないときは金百円を一日に換算したる期間被告人を労役場に留置すべきところ、(情状により一年間刑の執行を猶予)。 〔罰則-両罰規定〕 被告会社では全国六十有余の工場を有し、之等に対する指令事項の伝達は会社代表者たる社長から各工場長宛の回章の方法が採られ、右回章を受領したる各工場代表者は直ちに之を一般従業員に又は工場長回章によつて各課長に伝達し、更に課長は自ら或は係長を通じ一般従業員に対し伝達する方法が採られて来たのであるが、労働基準法の施行に際り其の普及徹底を図る為にもこの方法が採られ、殊に被告会社に於ては其の徹底を期する為め既に昭和二十二年四月全国各工場に指令して労働基準法準備委員会を設置し之が実施に伴う対策を研究せしめ、同年八月各工場長及び各人事課長を集合せしめて其の説明会を実施すると共に担任者を設置して其の対策の研究に当らしめた外其の施行されるに及んでは直ちに社長回章によつて各工場に伝達してその普及徹底を図り、此の回章に接した前記淀川工場では同年十二月初頃各課から一名宛参集せしめて其の指導教育を為し、更に女子従業員に対しては宿舎の部室毎に男子従業員に対しては其の休憩所に夫々労働基準法の抜萃を掲示して其の普及徹底を期し、又毎月一日、十五日に各課長会議を開催して人事課長をして之が説明を為さしめる等末端従業員に対しても周知徹底せしめていた事実を認定するに足る。従つて会社代表者は其の違反の防止に必要な措置を講じていたものと謂ふべく、偶々前掲事情に因り本件被告人Yの違反行為があつた故を以て直ちに会社代表者がその防止に必要な措置を講じなかつたものとは断じ得ない。結局本件公訴事実中被告会社に関しては犯罪の証明がないものと言ふべきであるから刑事訴訟法第三百三十六条に則つて被告会社に対して無罪の言渡を為すべきものとする。 仍て主文の通り判決する。 |