ID番号 | : | 10304 |
事件名 | : | |
いわゆる事件名 | : | 中松硬質ガラス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 最低年齢違反とこれに関する一二一条(両罰規定)の適用につき、但書の「違反の防止乃至是正に必要な措置」の意義が争われた事例(肯定)。 |
参照法条 | : | 労働基準法56条1項 労働基準法56条2項 労働基準法118条 労働基準法121条 |
体系項目 | : | 年少者(刑事) / 最低年令 罰則(刑事) / 裁判所の管轄権 |
裁判年月日 | : | 1949年8月2日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | |
出典 | : | |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年少者-最低年令〕 本件違反者数は九名であるがその内昭和二十三年二月二十七日採用のAは昭和九年一月二十六日生れであるから採用当時は満十四歳に達してはいるが尋常五年終了であるので之は採用の日から違反である。又昭和二十二年四月二十日採用のBは昭和九年十月九日生れで満十四歳未満、又昭和二十二年八月九日採用のCは昭和十年一月五日生れで満十四歳未満であるので右両名共猶予期間経過後の五月一日以降の使用は違反である、又昭和二十三年四月二十九日採用のDは昭和十一年十一月十一日生れで当時満十二歳未満で勿論違反である。 之等四名の違反使用に就て被告人は単に彼等は年令を偽つて入所したとか、或いは当時同人等の年令の調査が不十分であつたとか弁解するのであるが、そして右弁解の様なことは証人E等の証言に依つて之を認め得るけれども右年令の調査は被告人の当然の職責であり、それは又容易になし得ることであるので之は僅かに被告人に違反を敢てする積極的悪意がなかつたという事に就ての多少の情状を供する丈で固よりそのこと自体は被告人の怠慢と不誠意を示す以外の何物でもなく何等責任回避の事由にならないこと勿論である。 〔罰則-裁判所の管轄権〕 此の製作所に於て事業主である被告人が主として資材、燃料等の入手関係で対外折衝に当り製造部の管理及び工員の雇入解雇等の労働者に関する事項は工場長として工場長の責任に於て労働主任をして之に当らしていたという機構乃至職制は吾人の常識に照し何等不合理のものとは思われない。殊に労働基準法施行後は同法の遵守に関する事項は工場長の責任に於て労務主任をして之に専従せしめ而も此の労務主任には所員中最も学歴の高い大学乃至専門学校出身者で且つ労務関係の仕事の経験のあるものを配置した上絶えず同人等に対し法規をよく研究して間違いを起さない様に注意して居つた事と前記第一の如く第二回臨検後、違反あることを知らされるや直ちに該当者全員を調査させて、その解雇手続を採らせ、其の後工場長に違反の防止及是正に就て再三の注意を与え工場長から最後的に違反を完全に是正除去したという返答迄得て居つたという点と更に第一の如く本件違反が主として従業者の法規の誤解に基因する不用意に依る犯行であつた点等を併せて考えると、被告人は事業主としての従業者に対する前掲指導監督の義務は之を果したものであり従つて之に依り本件違反の防止及是正に必要な措置を採つたものと認めるのが法第百二十一条の法意に副う見方であると考える。更に或いは被告人は月二、三回工場を見廻つているのであるから其の際直接違反該当者と思われる者に当つて見る誠意を示したならば本件違反のことを確め得た筈であるという見方があるかも知れないが、被告人が当時工場を見廻つていたのは殆ど外部からの視察者の案内等の場合であり、而も違反該当者であるか否かは一寸見ただけでは分らないし、それに被告人としては常に工場長労務主任等に注意していた事でもあり殊に第二回臨検後に於ては、前記の如く該当者全員解雇の手続を採らせ再三工場長に違反の防止及是正に就て注意を与え工場長からも解雇済の報告を受けていた安心感もあつた事と思われるので被告人が見廻りの際直接本人に就て調査しなかつたからといつて此の点を責めることも当を得たものとは思われない。 |