全 情 報

ID番号 10506
事件名 暴行被告事件
いわゆる事件名 茨木市水道事業所事件
争点
事案概要  市職員組合と市当局との時間外労働に関する紛争の過程で生じた暴力事案につき組合員が起訴された事例。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法33条1項
労働基準法36条
体系項目 労働時間(刑事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の要件
裁判年月日 1970年3月27日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (う) 790 
裁判結果 棄却(確定)
出典 タイムズ255号245頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働時間-時間外・休日労働-時間外・休日労働の要件〕
 三三条一項の規定について考えてみるに、同条項は、三六条とともに三二条の例外規定であつて、その要件が充足されたときは、三六協定の有無にかかわらず、使用者が労働者に時間外勤務をさせることができることは既に説示したとおりであるが、三三条一項による時間外勤務は、労働者の意思の如何にかかわりなく行なうことが認められているのに対し、三六条による時間外勤務は、労働者が労働法上の基本原則たる権利、すなわち時間労働の制限を、労働組合等を通じて任意に処分することによつて生ずるものであるから、その点において両者の間には本質的な差異があり、従つて、両者等しく三二条の例外規定ではあるけれども、その間に自ら序列的なものを潜在させていること、換言すれば協定に基づく三六条による時間外勤務が、労働者の意思に基づかない三三条一項による時間外勤務よりも優位に立つものと解するのを相当とする。されば、使用者側は、誠意をもつて三六協定の締結に努力すべきであり、それにもかかわらず労働者が故なくこれに応じないときは、協定による利益を放棄したものと認められるから、三三条一項の規定が表面に浮び上がり、同条項所定の事由が発生したときは直ちにこれを適用し得るのであるが、これに反して、使用者側が、三六協定の締結に努力しないで三三条一項の規定を適用しようとする場合には、それは労使間の関係が契約で成り立つことを本旨としている労働法の精神にも反し許されないものと云わなければならない。