ID番号 | : | 10536 |
事件名 | : | 住居侵入被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 鐘紡淀川工場事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被解雇者が会社に立入って建造物侵入で起訴された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3条 |
体系項目 | : | 労基法総則(刑事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇 解雇(刑事) / その他 |
裁判年月日 | : | 1951年3月30日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | 有罪(罰金2,000円) |
出典 | : | 刑事裁判資料102号643頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法総則-均等待遇-信条と均等待遇〕 〔解雇-その他〕 解雇の効力は窮極的には民事事件において裁判所が決定すべきところであつて、本件住居侵入被告事件の審理に当つては犯情を明らかにする程度を超えてこの点に立入る必要なきものと解すべく、会社は工場施設に対する一般包括的な管理権を有し、これを占有看守するものであつて、住居侵入罪の保護法益は占有、看守する場所が法律上保護せられていることの意識すなわち安全にありと解すべきところ、会社が一応適式に行われた解雇に附随して立入禁止を通告すれば、該禁止の効力は直ちに発生し、被解雇者としては解雇に伴う解雇手当等の受領、私物の持帰り等雇傭関係の終了に伴う後始末のため会社側の許可を得て立入る場合の外は当然立入りの権利を失うべく、この関係は会社が門扉を閉していようと開いていようとによつて消長なく、また敢えて裁判所の仮処分決定を待つ要なきもので、むしろ被解雇者として会社に自己の立入を認めさせるためにこそ裁判所のその旨の仮処分決定を得る必要あるものと解する。かように解することが右住居侵入罪の法意並びに社会秩序の維持、安全をなにものにも代え難く(場合によれば正義にもまして)保護しようとする法の精神に適合する所以であると信ずるのである。ちなみに、被告人及び弁護人は会社側が警備員を増強し、有刺鉄線を張り廻らす等挑発的行動に出たから、その実力行動に対する自力救済として実力を行使したのであるというけれども、工場施設を占有、看守する会社側として解雇に伴い発生するかも知れない不祥事態を未然に防止し、共に無用に傷つかないようにすることこそ、むしろ慎重な態度として賞揚すべき事柄でこそあれ、これをもつて挑発的行動と解するか如きは決して素直なものの見方ではあるまい。 また工場内においてビラを撒くことについては、就業規則等で予め管理者の許可を得る等一定の制限がある筈であるから、当初より会社側の許可を無視してこの行動に出る意図で立入ることは不法であるといわなければならない。 |