ID番号 | : | 10539 |
事件名 | : | 住居侵入被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本重工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被解雇者が立入りを禁じられた会社に立入って建造物侵入で起訴された事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働組合法1条 |
体系項目 | : | 解雇(刑事) / その他 |
裁判年月日 | : | 1951年11月29日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和26年 (う) 2032 |
裁判結果 | : | 破棄・自判 |
出典 | : | 高裁刑特報19号45頁 |
審級関係 | : | 一審/長崎地/ . ./不明 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-その他〕 労働者の労働力は当該企業の生産力を構成するものであつて、労働者は自己の負担する労務を誠実に履行して当該企業の生産に役立て、ひいて社会の福利に寄与することによつて、勤労の喜びを享受し生存の意義を全うすことができるのである。されば、労働者が工場を破壊し工場内の秩序を撹乱する等の具体的危険があるとか、電力資材の不足によつてやむを得ないことで操業を制限休止するとか、その他正当の事由がある場合は格別、かような正当の事由がなくして、使用者が一部労働者の工場立入を禁止しその就労を拒否することは、たとい休業中の給与を支給する場合と雖も、労働者の人格を侮蔑するものであつて使用者の権利の濫用といわねばならない。又労働者がその所属労働組合の職場大会に出席することは労働組合員としての当然の権利であつて、たとい職場大会の会場が工場の一部であつても、労働組合がその工場の一部を会場に使用することが工場管理者の意思に反せず不法の使用でない以上は、一部労働組合員が職場大会に出席する目的でその会場に当てられた工場の一部に平穏に立入ることを使用者すなわち工場管理者において拒否すべき事由はないわけである。本件においては原審の取調べた総ての証拠及び訴訟記録を精査しても、本件会社が現にその雇傭中の工員である被告人に対し工場立入を禁止しその就労を拒否すべき正当な事由及び被告人の所属するA造船所労働組合が同造船所構内の工場の一部である小細工部屋を職場大会の会場に使用したことが工場管理者たる同会社の意思に反し不法の使用であつたと見るべき事情は全くこれを見出し得ないのである。されば同会社が被告人に対し退職を勧告するに際し、その未だ退職又は解雇に至らない前から、何等正当の事由なくして被告人の同造船所構内えの立入を禁止し以てその就労を拒否したことは不当であるのみならず、被告人の所属する労働組合が同造船所構内の工場の一部である小細工部屋を職場大会の会場に使用することが同会社の意思に反せず不法の使用といい得ない以上は被告人がその職場大会に出席する目的で何人の制止も受けず平穏にその会場に当てられた小細工部屋に立入ることを工場管理者たる同会社において拒否すべき理由もないわけであるから被告人の小細工部屋えの立入行為を以て違法の行為と目することはできない。たとい被告人に、職場大会に出席する目的以外に友人知己に挨拶する目的もあつたとしても、その挨拶が同会社にとつて特に危険有害なものであれば格別、挨拶目的を兼ねたがため、もともと違法性を有しない立入行為が違法となるべき理由はない。 |