ID番号 | : | 10540 |
事件名 | : | 建造物侵入被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 十條製紙八代工場事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 被解雇者が立入りを禁止された会社に入り建造物侵入罪で起訴された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条 労働組合法1条2項 |
体系項目 | : | 解雇(刑事) / その他 |
裁判年月日 | : | 1951年12月19日 |
裁判所名 | : | 熊本地八代支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和25年 (わ) 237 昭和25年 (わ) 286 |
裁判結果 | : | 有罪(懲役6か月) |
出典 | : | 刑事裁判資料102号854頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-その他〕 本件について考えるに、先づA会社八代工場長の為した前認定の立入禁止は被告人四名に対し前認定のような理由で条件付解雇通告を為すと同時にかゝる予告を受けた同人等の工場内立入は企業の秩序を紊す惧あるものとして発せられたものであるが、会社側としてかゝる態度に出でたことは企業を防衛する観念に立てば已むを得ないところでこの処置は社会通念上許されるものと思惟する。何となれば、会社の右解雇予告の法律上の効力如何、解雇に関する団体交渉の成行如何が右被告人四名の労働権に及ぼす影響は重大なるものがあると思うが、右立入禁止により被告人等が受くる制限は就労権についてのみであつて労働権の中に含まれると考えられる労働賃金請求権等その他の権利は少しも制限を受けることなく、これに反し同人等を立入させることにより受けるものと想像される企業経営上の損失は遥かに大であるといわねばならない。工場長の本件立入禁止は企業権の行使として適当な措置であつて、被告人及び弁護人主張のように不当又は権利の濫用とは解せられない。 次に被告人等の本件入場は組合の決議による組合活動であることは認められるが、組合活動であれば如何なる目的のためにも又如何なる方法によるも正当視されるものではなくその目的又は手段において自ら一定の制限がある。前認定のような事情の下において前認定のような目的方法により多衆の威力を示し以て使用者側の阻止の意思抵抗に関して実力を以て工場内に侵入することは適法な範囲を逸脱したもので労働組合法第一条第二項に所謂正当の行為といわれない。従つてこの点に関する被告人及び弁護人の主張も失当である。 |