全 情 報

ID番号 10541
事件名 収賄被告事件
いわゆる事件名 富山・高岡労基署事件
争点
事案概要  労働基準監督官が事業主等から金品の供与を受けたとして収賄の罪で起訴された事例。
参照法条 労働基準法8条
体系項目 労基法総則(刑事) / 適用事業 / 事業の概念
裁判年月日 1952年8月22日
裁判所名 名古屋高金沢支
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (う) 221 
裁判結果 棄却
出典 高裁刑特報30号97頁
審級関係 一審/富山地/   .  ./不明
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-適用事業-事業の概念〕
 論旨援用の資料によれば、富山並に高岡労働基準監督署に於ては同署の管轄区域をさらに数地区に分割し、在勤する数名の監督官をして、これ等各地区の一若しくは二以上を、各自の受持区域としてそれぞれ担当せしめ、原則として該地区に所在する事業場についてのみ、法定事項の指導監督、違反行為の摘発検挙等、労働基準法による諸般の事務の処理を為さしめていたものであること労働基準監督官たる被告人等は、それぞれ担当地区内の事業場について、前記のごとき事務に従事していたものであつたこと、被告人等に金品を供与し、又は、被告人等を饗応接待した者の中には、当該被告人の担当地区外に所在する事業場の関係者もあり、これ等の者は、関係事業場の所在する地区以外の地区を担当する監督官の、該監督官の担当する地区所在の事業場を対象とする個々の職権行使については、通常、直接に利害関係を持たなかつたものであることを、それぞれ認め得ないでもないけれども、しかしながら、〔中略〕前記担当地区なるものは、各労働基準監督署長の定める一応の内部的事務分配に過ぎず、しかも、毎年度変更せられることを例とするものであつて、各監督官は、いやしくも当該所属庁の管轄区域内である限り、或は署長の命により、或は署長の命を俟つ迄もなく必要に応じ、所謂担当地区の内外を問わず、所属庁管轄内の各事業場に対し、自己の有する法定の職権を完全に行使することが出来たものであることを認めるに足る。そうして見れば、被告人等は、自己の担当する区域の外にあると内にあるとに拘らず、いやしくも、それが所属庁管轄区域内の事業場である限り、これ等の事業場に対し、法定事項の指導監督、違反行為の摘発検挙等、労働基準法に基く諸般の事務を処理する職権を有し職務を負うていたものであることが明かであるから、「担当地区外に所在する事業場関係者よりの利益収受は、事務に関係のない者からの利益収受であつて、従つて、被告人等の職務に関するものではない。」との論旨は、到底これを採用するを得ない。