ID番号 | : | 10544 |
事件名 | : | 建造物侵入被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 日紡貝塚工場事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | レッドパージで解雇された者が工場内に立入ったことにより建造物侵入罪で起訴された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3条 日本国憲法14条 |
体系項目 | : | 労基法総則(刑事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇 |
裁判年月日 | : | 1953年12月18日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労経速報126号4頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法総則-均等待遇-信条と均等待遇〕 労働関係における差別待遇の禁止に関する労働基準法第三条の規定及び一般公序良俗に関する民法第九十条の解釈に当つても、右憲法第十四条に関する解釈態度は原則として妥当するのであつて、使用者は、その雇傭する従業員の内心の思想信条の如何のみにより、これを解雇する等不利益な処置をとることは許されないが、その思想信条の表現又はこれ等に基く行動が使用者の権利を現実に侵害し(又は使用者に対する義務に現実に違反し)或いは、使用の権利を現実に侵す危険(又は使用者に対する義務に現実に違反する危険)が明白に存する場合、使用者がその権利に基く憲法の精神及び社会生活上の通念に照らし、合理的と思われる処置を講ずることは何等平等待遇の原則に反することにはならないのである。 従つて、若し従業員に右の如き権利侵害又は義務違反の行為、或いはそれ等のおそれある行為のあつた場合、その者が如何なる思想信条を有すると又はその行為が如何なる思想信条に基くとを問わず、使用者はその有する権利の範囲内において、右従業員の責任を追求するに適当な方法、例えば譴責、出勤停止、減給、解雇等の処置を合法的にとり得るものといわなければならない。ところで、これを本件につき考えて見ると、本件会社の示した緊急人員整理実施要綱によると、その解雇の対象者は、「共産主義的活動に関連を持つものであつて、事業の社会的使命に自覚を欠くもの円滑な業務の運営に支障を及ぼすもの常に煽動的言動をなし他の従業員に悪影響を及ぼすもの、及びこれらの虞れあるもの」というのであつて、それは結局会社事業の正常な業務運営の維持確保を計るため、これを阻害すると思われる右列挙の如きものを、その企業組織内から排除しようとするものであるから、そのこと自体の適法であることはもちろんである。 |