ID番号 | : | 10554 |
事件名 | : | 労働基準法違反被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 太平工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 満一八歳に満たない年少者をアセチレンガスの詰替作業に従事させたとして工作課長等が起訴された事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法63条2項 労働基準法10条 労働基準法119条1項 |
体系項目 | : | 労基法総則(刑事) / 使用者 / 労基法の使用者 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務 |
裁判年月日 | : | 1958年12月22日 |
裁判所名 | : | 盛岡家 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和33年 (少イ) 1 |
裁判結果 | : | 無罪 |
出典 | : | 時報176号30頁/第一審刑集1巻12号2069頁/家庭裁判月報10巻12号123頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法総則-使用者-労基法の使用者〕 被告人Y1は昭和二一年一一月ごろA株式会社(以下たんに「A」という。)に入社し本社に勤務していたが、同三〇年一二月ごろ同社釜石支店に配置替となり、同三二年六月ごろ新たに設けられた同支店工作課長に任命され、同支店長の統轄のもとに工作課および同課の管轄に属し釜石市B町にあつて同支店の貨車修理作業を行う工場(以下たんに「B工場」という。)の作業の総括的指揮、工員の人事、経理その他の業務一切について指示をする責任者の地位にあり、被告人Y2は同二七年八月ごろA釜石支店に入社し、同三二年五月ごろ新らしく同支店B工場ができてからのちは同工場の現場主任となり爾来工作課長の補助者として同工場における事務、資材関係の業務、工員の配置や作業の監督指導などに当つており被告人Y3は同二九年二月ごろA釜石支店に入社し、同三二年六月ごろよりB工場において現場主任の指揮をうけながら親方と称する工員の世話役および工場現場の総指揮者であるいわゆる棒心として同工場関係の工員の配置や作業の指示監督などに当つていたことが認められる。そして以上の認定事実によれば、被告人らはいずれも労働者である工員の人事あるいはその管理など労働者に関する事項について事業主たるA工業の利益のために行為した者というべきであるから、労働基準法第六三条第二項にいわゆる使用者に該当するといわねばならない(同法第一〇条参照)。 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕 検察官は、被告人らの前示のような所為は労働基準法第六三条第二項、女子年少者労働基準規則(昭和二九年労働省令第一三号)第八条第二九号の規定に違反し、労働基準法第一一九条第一号に該当すると主張するが、がんらいみぎ労働基準法違反の罪は満一八歳に満たない年少労働者は幼弱にして注意力ないし抵抗力の乏しいのが通常であるため、安全、衛生または福祉に有害な場所における化学的危険業務に就かせることを禁止することによつて危害の発生を未然に防止し、年少労働者の生命または身体の安全を保護しようとする行政目的にもとづいて規定されたものであるが、その罪の成立とくに行為主体の責任につき同法あるいはその他の法律に特別な規定がないから、労働基準法第一一九条第一号による処罰がなされるためには使用者じしんが故意にもとづく所為をもつて同法第六三条第二項、女子年少者労働基準規則第八条第二九号の規定に違反することを要し、使用者の過失ないしは無過失による犯罪の成立を認めるものでないことは法文上疑問の余地がない(労働基準法第一二一条参照)。 |