ID番号 | : | 10565 |
事件名 | : | 労働基準法違反被告事件に対する控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | |
争点 | : | |
事案概要 | : | 満一八歳未満の児童らをコンパニオンとして派遣したことが労基法六二条二項および三項に違反するとして、罰金四〇万円を科した原判決が維持された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法62条2項 労働基準法62条3項 労働基準法119条1号 刑事訴訟法396条 |
体系項目 | : | 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務 |
裁判年月日 | : | 1992年2月6日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成3年 (う) 964 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 家裁月報44巻8号54頁 |
審級関係 | : | 一審/千葉家松戸支/平 3. 7.16/平成1年(少イ)1号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕 一 理由のくい違い又は理由不備若しくは事実誤認の主張(控訴趣意第一)について 論旨は、要するに、原判決は、被告人に対し、コンパニオンとして派遣した本件児童らの年齢が満一八歳未満であることについて未必の認識があったと認定したが、被告人は、本件児童らの年齢を確認し、満一八歳以上であると信じていたものであるから、原判決には理由のくい違い又は理由不備があり、若しくは事実誤認があるというのである。 そこで、検討するに、関係証拠によると、被告人は、昭和六二年ころ以降、酒客の接待をするコンパニオンとして自ら働き、翌年から独立してコンパニオン派遣業を経営していたが、コンパニオンの年齢が満一八歳以上でなければならないことは十分に知っていたこと、本件児童らは、犯行当時、満一六歳九箇月から満一七歳一一箇月までの者であり、三名が高校三年生で、他の4名がこれらの者より学年で一年下の高校中退者又は中学校卒業者であったこと、本件児童らのうちには、被告人あるいはその補助者の採用面接を受けることなく、既にコンパニオンとして働いていた友人と共に直接派遣先に赴いた者もいたこと、被告人らは、本件児童らの採用面接に当たって、本人から年齢を聞いていないこともあったこと、年齢を聞いた場合でも生年月日まで問いただしたことはごくまれで、戸籍謄本や身分証明書はもとより簡単な履歴書すら提示を求めたことはなかったことが認められる。これによれば、被告人は、本件児童らをコンパニオンとして採用し、使用する際、年齢の点については、本人からの申告だけに頼り、なんらの調査もしていないことが明らかであるから、その年齢が満一八歳未満であることについて未必的認識を有していたものと認められる。 なお、被告人は、本件児童らはすべて満一八歳以上であると信じていたと述べ、その理由として、コンパニオンの募集広告には応募資格は満一八歳以上と明記しており、これを見て応募してきた本件児童らも自分の年齢を満一八歳以上であるといっていたからであるという。しかし、応募者は右の募集広告を見ているから満一八歳以上の者に限られるはずであるとは一概にいえないし、応募者としては、採用されたいあまり、本当は満一八歳未満であるにもかかわらず、満一八歳以上であると年齢を偽って申告することがあり得ることは容易に予測されるところであるから、被告人の右供述はにわかに信用しがたい。 以上のとおり、原判決に所論の理由のくい違い又は理由不備若しくは事実誤認はなく、論旨は理由がない。 |