全 情 報

ID番号 10567
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 林製鋲株式会社名古屋工場事件
争点
事案概要  工場長として硫酸等の温度を高めるために必要な「湯沸器」を設置しながら、右「湯沸器」の設置について工事着手一四日前までに監督署長に届け出を出すべきであったにもかかわらず、その手続をとらなかったとして起訴された事件で、労働基準法(旧)五四条一項の「届出を要する設備」の意義が争われたケース。
参照法条 労働基準法54条1項
体系項目 労働安全衛生法 / 機械・有害物に関する規制 / 機械
裁判年月日 1952年3月29日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (う) 345 
裁判結果 破棄自判
出典 高裁刑集5巻4号536頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-機械・有害物に関する規制-機械〕
 凡そ労働基準法がある一定の事項について届出又は認可を要するとするのは労働者のためその作業過程等において生ずべき有害、危険に対し予防的措置を完うし以てその安全と衛生とを保持しようとするにあることはその立法の趣旨から考えても明かであつて同法第五十四条第一項に届出を要する所謂設備の設置乃至その変更もその趣旨に沿うてこれを理解すべきであり従つてその届出を要する場合は普通に設備の設置乃至その変更と思われる一切の場合をいうものとはなし得ないが原審のようにその規模の大小によつてのみその届出の要否を決定すべきものとすることは誤であるとせねばならない。昭和二十四年六月二十一日附労働省労働基準局長の労働基準法第五十四条の届出についてと題する通達二によれば同法条第一項の「設備」とは原動力、動力によつて運転する産業用機械及び製造、加工、運搬、貯蔵又は移送用装置をいう趣旨であつて例へば金属圧延、鋳造用機械、紡績機械、木工用機械、化学機械及び装置、土木用機械等がこれに含まれるとあり或は原審が右の「動力によつて運転する」との制限を製造、加工その他の装置に迄も及ぶと解し従つて所謂設備は大規模のものに限ると解したとも見られるのであるが右の「動力によつて運転する」とは文理解釈上産業用機械のみに附せられた制限であることが明かであり且つ検察官論旨のように動力によつて運転するのでもなく且つその規模は大きくないにしても爆発や有毒瓦斯発生等労働者の安全衛生のため予防的の監督を要する固定的装置等の多いことを考えても届出は大規模の場合に限るとするのは失当であり又その届出が労働者の安全衛生の見地から考慮されているものであることは右通達五の(イ)においてもこれを窺うに難くないのである。