全 情 報

ID番号 10585
事件名 労働安全衛生法違反等被告事件
いわゆる事件名 日本電設事件
争点
事案概要  事業者の意義につき、労働安全衛生法二〇条三号、労働安全衛生規則三四五条一項二号、三五〇条一項にいう事業者は当該工事についての高度の知識経験を有する者に限定的に解すべき根拠はなく、元請人と上下の関係にあるとしても、右にいう事業者に該当するとされた事例。
参照法条 労働安全衛生法20条3号
労働安全衛生規則345条1項2号
労働安全衛生規則350条1項
体系項目 労働安全衛生法 / 安全衛生管理体制 / 事業者
裁判年月日 1975年6月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (う) 301 
裁判結果 棄却
出典 東高刑時報26巻6号109頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-安全衛生管理体制-事業者〕
 所論は法令適用の誤りを主張し、原判決は被告人を労働安全衛生法二〇条三号、労働安全衛生規則三四五条一項二号、三五〇条一項にいわゆる事業者にあたるものとして、同法一一九条一号を適用処断しているが、被告人は電気等に関する高度の知識経験もなく、単にA工業株式会社(以下Aという)が日本国有鉄道(以下国鉄という)から請負い施工していた電気工事事業に包含される屋外シリコン除去および塗布工事の作業に従事していたものであるにすぎないから、右の事業者はAとみるべきであって、被告人はこれにあたらない、というのである。
 しかし、右の事業者を所論のように該工事について高度の知識経験を有する者に限定的に解すべき根拠はなく(同法二条三号、労働基準法八条、九条参照)、また、原判決挙示の証拠によると、被告人はAの無給嘱託の地位にあり、本件工事に関し同会社の作業責任者となっていたものであるとはいえ、同時に被告人の個人営業であるB社の経営者として、本件工事を同会社から請負代金一七〇万円で下請し、自己が雇傭した従業員を使用指揮してこれを施工していたものであるから、右工事の元請人たるAと上下の関係こそあれ、これと並んで自らも下請人たる事業者にあたることは明らかであるから、原判決には法令適用の誤りはない。論旨は理由がない。