ID番号 | : | 10586 |
事件名 | : | 労働安全衛生法違反被告事件 |
いわゆる事件名 | : | 奈良県葛城地清掃事務組合事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | し尿処理場に設置される活性汚泥槽は労働安全衛生規則五三三条にいう「ピット等」の「等」に含まれるとし、この危険防止をしなかった事務組合に罰金四〇〇〇円が科された事例。; 労働安全衛生法一二二条により法人を処罰するには、その代表者または従業員がその法人の業務に関し、同条所定の違反行為をしたことが証明されれば足り、行為者が起訴、処罰されることを要件としないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働安全衛生法21条2項 労働安全衛生法27条1項 労働安全衛生法119条1号 労働安全衛生法122条 労働安全衛生規則533条 |
体系項目 | : | 労働安全衛生法 / 危険健康障害防止 / 危険防止 労働安全衛生法 / 罰則 / 両罰規定 |
裁判年月日 | : | 1976年2月24日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (う) 950 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | タイムズ337号305頁/刑裁月報8巻1・2号14頁 |
審級関係 | : | 上告審/10587/三小/昭51.12.10/昭和51年(あ)550号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働安全衛生法-罰則-両罰規定〕 論旨は、行為者が起訴、処罰されていないのにかかわらず、原判決が被告人組合を処罰したのは、労働安全衛生法一二二条を違法に拡大解釈し、かつ、憲法三一条の法定手続の保障に違反するというのである。 よつて案ずるに、被告人組合は、地方自治法に基づく特別地方公共団体たる法人であるところ、労働安全衛生法一二二条により法人を処罰するには、その代表者または従業者がその法人の業務に関し、同条所定の違反行為をしたことが証明されれば足り、行為者が起訴、処罰されることを要件とするものではない、と解される(最高裁判所第二小法廷、昭和三一年一二月二二日決定。刑集一〇巻一二号一六八三頁参照)から、被告人組合の従業者である事務局長Aが、被告人組合の業務に関し、労働安全衛生法一二二条所定の同法一一九条一号(二一条二項、労働安全衛生規則五三三条)に該当する違反行為をしたことを認定している原判決には、所論のような違憲、違法のかどはない。論旨は理由がない。 〔労働安全衛生法-危険健康障害防止-危険防止〕 先ず昭和四七年一〇月一日施行の現行労働安全衛生規則五三三条には「労働者に作業中又は通行の際に転落することにより火傷、窒息等の危険を及ぼすおそれのある煮沸槽、ホツパー、ピツト等があるときは、当該危険を防止するため、必要な箇所に高さが七五センチメートル以上の丈夫なさく等を設けなければならない」と規定され、右規則施行前の(旧)労働安全衛生規則一三四条の二にも同旨の規定が存するが、これらの「ピツト等」の「等」には、し尿処理場に設置される活性汚泥槽が含まれると解するのが相当である。 けだし、ピツトとは、その元来の意味は穴、窪みのことで、一般的には、(1)、陸上競技場におけるジヤンプ競技の砂場、(2)、劇場の平土間、(3)、自動車レース場の給油、タイヤ交換補修所(穴がつくられ人が立つたまま作業する)(4)、炭坑の堅坑等(三省堂発行、コンサイス外来語辞典。岩波書店発行、広辞苑参照)のことを指し、また、砂びんやメツキ工場の酸洗いのために土間に設けられた温湯槽などは右「ピツト等」の「等」に含まれるものと解せられているところ、し尿処理場における活性汚泥槽は、通常槽内は上部開口の穴状であつて、穴は深く、規模は大きく、周囲の通路から汚泥水面まで相当の落差があり、汚泥水深は数メートルに及び、労働者が昼夜巡回等のため周囲を通行する際に、転落することにより窒息等の危険を及ぼすおそれのあるもので、ピツト的要素、形態を有するから、典型的なピツトに準ずるものとして、右「ピツト等」の「等」に含まれるものというべきである。 |